遺伝性の病気を…

Q2: 遺伝性の病気を持っています。研究に協力したいので、私の体からiPS細胞を作ってもらえませんか?

A2:
私どもは昨今報道でされております通り、遺伝性の神経疾患の患者様から体の組織の一部を頂いて、そこからiPS細胞を作成する研究を行っております。
これらの研究計画は、慶應義塾大学大学院医学研究科・医学部倫理委員会で審査され、慶應義塾大学医学部長により承認されたものです。
まずはこの研究の概要を簡単にご説明いたします。

遺伝性の神経疾患の新しい治療法や病気のしくみを解明するために最も良い方法は、病気にかかった患者様の体の部分(脳・脊髄などの神経)を使って研究をすることです。しかし、人間の体の中にあるそれらの部分は、人間が生きていくために必要な部分であり、実際にその部分を取って研究をすることはできません。
ところが、最近開発されたiPS細胞という技術を使うと、皮膚など体の他の部分から、体のすべての部分を作り出すことができるiPS細胞を樹立したのち、そこから神経の細胞を作り出すことができます。すなわち、患者様から取った小さい皮膚片や手術・検査で取り去った体の一部分などを使って、患者様の脳・脊髄などの神経を試験管の中で生み出すことができます。試験管内で作った患者様の神経は、患者様がかかっているのと同じ病気にかかっている状態だと考えられます。
この試験管内で作った患者様の神経は、新しい薬の開発や、病気の原因の解明などに有用であり、同じ病気に苦しむ患者様達の将来の治療法の開発に向けて大いに役立つと考えられます。

iPS細胞には、患者様の病気で失われた機能を再建するための移植に使えるかもしれないという、もう一つの期待があります。しかしながら、現時点では人間の体の中に戻したときの安全性や有効性が十分に確認されておらず、現在作られているiPS細胞が実際に細胞移植を使った新しい治療に使えるかどうかはわかっておりません。従って、患者様の体の細胞から作られたiPS細胞や脳・脊髄などの神経は、残念ながら直接的にはその方自身の病気の治療には使用することができませんが、そのiPS細胞から新しい研究成果が生まれた場合、同じ病気に苦しむ患者様達の将来の治療法の開発に向けて大いに役立つと考えられます。

患者様からの研究協力のお申し出は、私どもにとって非常に有り難いことです

現在、慶應義塾大学大学院医学研究科・医学部倫理委員会で私どもが承認を受けた疾患は約30種類あります。このリストにある以外の疾患でも随時追加が可能な状況になっております。しかしながら、患者様からのiPS細胞の作成には多くの労力と時間を要しますので、このようなiPS細胞という技術が本当にその病気の研究に有用であるかどうかを、私どもは現在、いくつかの疾患を選んで注意深く検討しているところであります。
しかしながら、いくつかの疾患に関しましては、iPS細胞樹立や樹立後の解析において、いくつか技術的に困難な部分がございまして、この問題が克服された場合には大規模に研究を展開していきたいと考えております。
その際にはまた広く広報させていただきたいと思いますが、これには少なくとも数年単位の期間が必要であるかもしれません。

当部門(生理学教室)は、直接に患者様を診療する部門ではなく、診療活動を行っておりません。後述の対象疾患リストに該当する病気の患者様で、iPS細胞樹立の研究協力を行いたいという方は、下記の手順でご相談ください。

→ 各科担当医に相談の上、担当医(もしくは各科iPS樹立担当共同研究者)から生理学教室に連絡をお願いしてください。

  • 2. 慶應義塾大学病院以外で受診されている患者様

→ 現在の医療機関の担当医の方から、直接生理学教室に連絡をお願いしてください。

実際に研究協力をお願いするかどうかは、患者様の病気の種類、これまでの経過、症状。性別、年齢、現在の状態などを総合的に詳細に検討して決定したいと思います。残念ながら全員の方のお申し出をお受けすることはできないと思われますが、その場合はご容赦いただけますと幸いです。

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