Q1;脊髄損傷に対する幹細胞移植治療の試験に協力したいのですが
A1; 私どもは、iPS細胞や神経幹細胞を用いた中枢神経系再生方法の確立に取り組んでいます。もちろん、私どもの研究の最終目標は、実際に病気に苦しむ患者様が、私どもの研究成果によって、これまでは不可能と思われた病態の改善を実現することです。
私どもが最近報告し、報道されておりますのはマウスおよびヒトiPS細胞を用いた動物脊髄損傷モデルの症状改善についてであります。私どもは現在、サルなど人間に近い実験動物を用いた治療の研究を試みておりますが、その結果を確認するためには、もう少し時間が必要であると考えられます。
マウスなどで有効であった研究手法が人間に近い動物でもうまくいくかどうかは未知の部分があり、時には試行錯誤を繰り返さなければならない可能性も十分にあります。
それが人間にも有効であるかという点は、更に慎重に検討を重ねる必要があると思われます。同時に、癌細胞と似た性質を持つiPS細胞やES細胞などの幹細胞を治療に使用する際の安全性の評価は、それ以上に慎重に検討されなければならない課題だと考えております。
将来的にiPS/ES細胞を用いた治療法が確立され、大学病院で試行されることが目標ですが、残念な事に現時点ではiPS細胞を用いた治療を試験的にでも行っている病院はございませんし、現状では人に対する臨床治療が何年後に開始できるかというはっきりとしたお答えを申し上げることができませんが、少なくとも5年程度の年月がかかると考えられています。皆様からの研究協力のお申し出は、非常に有り難く思います。
現時点では残念ながらそのお気持ちだけを頂戴することになりますが、今後再生医療の研究が進歩し、将来的に試験的にでも患者様に応用される際には、またこちらから情報を発信していきたいと思いますので、それまでお待ちいただければと思います。